働かない


「働かざるもの食うべからず」

昔から、母にこれだけを言われて育った。子供ながらに、お手伝いすることを覚えさせられた言葉で、今でも自分に染み付いている気がする。

けれどアリは、働きものではなかった。7割のアリは、普段は休んでいるらしい。これはどういうことか。アリは働きものだなんて、人間の勝手な思い込みであったのだ。

自我のないアリが、どうしてその選択をするか—遺伝子的にそう組み込まれているからなのである。アリが生き延びるためには、常に休んでいるものがいる方が長く見た時には利益がある、らしい。いざという時にみんなが疲れているよりも、誰かしら動けるものが常に待機している方が良いのだ—。

人間も、そうなのではなかろうか。というのが次に湧く疑問である。働きものもいれば、休んでいるものもいる。そんな状態の方が健全なのではなかろうか。なんなら、休んでいるものがいればいるほど、人類全体とすれば良い状態なのではないだろうか。

科学のすごいところは、直観を事実で裏切れるところ。働いていた方が良いなんていう価値観や直観は、地道にアリを追う実験に、簡単に裏切られたのである。

適当に書いた、雑な感想文。

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『働かないアリに意義がある』

長谷川英祐/ヤマケイ文庫

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